それはある日、友人から届いたLINEから始まる。
友人「執事、行きますか」私「マジでか」数年に渡って名古屋にある執事の館に帰りたい帰りたいと言っていた私。
「いつか一緒に帰ろう!」とべろんべろんになっていた飲みの席で言っていた事を覚えていてくれた友人。
しかも車まで出してくれるという。
「すっげえ遠いけど大丈夫!?」と心配になるも、度量の深さで「大丈夫大丈夫」と言ってくれた友人に感謝感謝なのであります。
そんな我々の珍道中をざっくりとレポ。
■出発までまず悩んだのが
「どんな服で帰ればいいんだ……!?」という事でした。
私は服をあまり持っていません。
持っていても非常にラフな服。ジーンズとTシャツが基本装備。
ええー!?お嬢様らしい服なんて持って無いよう。どうすればいいんだよう。
とりあえずアレだ。散髪には行こう。そんな感じでオロオロする数日間。
そして車ってどこに置けばいいの!? 名古屋ってパーキングどのくらいあるの!?
ていうか近くにあるの!? そこから徒歩で帰れるの!?
執事の館は外観などの情報がまるでありません。どんなとこなの!?大丈夫!?
ていうかテーブルマナーとかまるでないけど大丈夫!!?
不安いっぱい。いっぱいすぎて泣きそうになりながらの当日を迎えるわけです。
うわー!こわいよー! そんな服じゃダメですとか怒られたらどうしようー!?
そんな事をTwitterでぶちまけていたら心優しい他のお嬢様から「ジーンズでも大丈夫ですよ!あまりにもボロボロだとばあやが針と糸を持って追っかけてくるかもしれませんが」と茶目っ気たっぷりのアドバイスをしていただきました。
という訳で、手持ちの一番綺麗なジーンズを用意して待機した訳でございます。
■当日 ~道中の車の中待ち合わせ場所に颯爽と車でやってきた友人。
長年の付き合いですが、実は車でお出かけというのは初めてでした。
友人の車は非常にハイテクでして、テレビのCMでしか見たことのない機能がめちゃくちゃ搭載されていました。
すげえ! 速度メーターがデジタル表示だ!!(そこかよ)
車の中ではFLOWやアジカンが流れていました。すっげえ若者みたいだな!!(※そうでもないです)
そしてカーナビに住所を入力していざ出発!
高速道路をかっ飛ばし(※すごい安全運転)、一路名古屋に向かいます。
車の中では「どうでしょうってすごいよな、カーナビも無しに道中見つけたホテルとかに飛び入りしてんだもんな」
「しかも海外とかだもんな」
「すげえなあの番組……」
と、どうでしょうの素晴らしさを語り合い、
「日本の職場環境はどうにかならんか」
「定時終わってから会議あるの意味がわかんない」
「定時までたっぷり使って仕事してるのに」
「出来ることバシバシ進めて、余った時間に会議とかすればいいのに、自分の仕事をゆーっくりやって残業することがむしろ誉とされてるのどうにかならんか」
「日本意味わかんねえ!!」
と社会情勢に切り込んだり、
途中にあった桜の名所を横目に
「すげー満開!」
「すげえ! ここがあの有名な!」
「有名な!!」
とテンション上げたり、
パーキングの揚げ物の匂いに胃を刺激されたり(私は朝からなにも飲み食いしていませんでした)、
可愛いお土産ものにキャッキャ言ったり、
なかなか楽しい旅路。
車酔いしやすい私でしたが、広々な車と綺麗な景色(まぁほぼ遮音壁ですが)のおかげで酔うこともありませんでした。
名古屋に近づくにつれて増えてくる荒っぽいドライバーの皆さんに戦々恐々としながらも、無事に高速道路を降りることができました。
■いざ執事の館現場に到着したのは1時間ほど余裕があってからでした。
しかし、時間を持て余した我々、ここで「少し散策しよう」と車を出ます。
初めての名古屋。
なにがどこにあるのかさっぱり解らない名古屋。
田舎者の我々は「道広い!!」「やべぇ、小洒落たカフェとかいっぱいある!」「カッコイイ!!」(小声)と完全にオノボリさん。
しばし散策した後に思い出しました。
私「そういえば会員番号控えてる?」
友人「あっ」
すごすごと車に戻り、スマホから会員番号を調べる我々。
友人「やばい、ログインできない」
友人「画面タッチしても反応しない!」
友人「パソコン画面から…… あ、できた」
一安心。そして、とうとう執事の館にやってきた訳です!
どこからどう入ればいいのか解らずオロオロする我々に、ドアを開けて「あっ」とドアマンのお兄さんと鉢合わせ。
私「○時から予約……予告していた者なんでしゅが(震)」
ドアマンのお兄さん「さようでございますか。ではこちらでお待ち下さい」
超スマート。オシャレな色の馬車に見惚れ、綺麗な樹木に心癒されながら門の前で待ちます。
しかし内心はバクバクです。どんな内装なのかもさっぱり解らない!
どんな迎えられ方するか解らない!!
名前と会員番号を告げると、館内での簡単なルールと説明を受けました。
そこで友人にまさかの試練。
ドアマンさん「屋敷内では原則お名前で呼ぶことができません」
友人「は、はい」
ドアマンさん「ですので、お坊ちゃま、旦那様、お嬢様、奥様の中から呼ばれたいものをお選びください」
友人「えっ あっ…… えー……。……お、お坊ちゃまで」
ドアマンさん「かしこまりました、お坊ちゃま」(優雅な笑顔)
門の前でお坊ちゃま爆誕。友人「こんな事聞かれるなら事前に選んでおけば良かった……(凹)」
ドンマイ。
私「なんであんなに葛藤してたの」
友人「お坊ちゃまか旦那様か悩んで……。いやだっておっさんだよ!? お坊ちゃまって変じゃない!?」
私「そんな事言ったら私の方が年上なんだからな!? 私だってお嬢様って呼ばれるんだよ!?」
友人「うわぁ……中入ったらずらーっと執事とかが並んでたらどうしよう」
私「そ、そんなには居ないよ……。居なかったと思うよ、確か……」
友人「いや、でもさぁ……」
私「ていうか結構落ち着いてるよね」
友人「俺がテンパったら姉御がもっとテンパると思って……」
私「なんかごめん」(終始小声)
そんな事をしていたら、「お席の準備ができましたので、どうぞ中へ」と呼ばれました。
ついに帰宅です!!
「おかえりなさいませ!」■帰宅迎えてくれたのは、優しそうな給仕係のおじ様と、穏やかな微笑みを湛えたばあや。
穏やかに微笑まれるお二人に、早速空気に飲まれる我々。
豪華なシャンデリア、ばあやの手による可愛らしく綺麗なお花、様々なカップやソーサー。
やべぇ、隙がない。
どこから攻めればいいんだ……!?数々の説明を「ひゃい」「綺麗」「すごい」「Twitterで見た!」などと返すしか出来ない私。
執事の館は語彙力を5才児にします。(お前だけだよ)
そして鞄や携帯、貴重品などを預けていざ中へ。
「上着お預かりします」と優しく言ってくださるばあやに、「すみません、汗臭くてすみません(震)」と恐縮しきりの私。
ばあやはずっと笑顔で対応してくださりました。
そして、いざお部屋へ! と意気込む私にばあやは言いました。
「お嬢様、お帽子を」
被ってるの忘れてたorz(帽子は体の一部です)
通されたのは白のお部屋。
真っ白な壁紙! 椅子! テーブルクロス! なにここ! すっごい綺麗!!
そして出された水出し紅茶とクッキー。
これが美味しいのなんの……!
緊張で火照った身体に、この日ほぼ初めての水分が行き渡ります。
香りが本当にふわっと鼻に抜けていく、とっても美味しいお茶でした。
うわぁん!! 美味しい!! 美味しいよう!! (語彙力が更に急降下)
そしてやってくる、ワゴンにいっぱいに並べられた美味しそうな食べ物たち!
「本日はこちらからお選びいただきます」
と、ひとつひとつ給仕係さんに説明をされるのですが。
カタカナに弱い我々、知ってる食べ物の名前しか覚えられない。給仕係さん「まず、最初にお運びするものを5つ選ばれるとよろしいかと思います」
私「ええと……。この……鶏肉の……カレーのなんか……」
給仕係さん「マサラチキンの煮込みですね」
私「あと……この豚の……豚のなんか……ソースのかかったやつ……」
給仕係さん「豚フィレ肉のグリエですね」
私「……ひゃい。しゅみみゃせん……(怯)」
給仕係さん「とんでもございません(穏やかな微笑み)」
一方の友人。
友人「タンドリーチキン、キッシュ、ティラミス、プリン、あとこのケーキを(キリリッ)」
給仕係さん「かしこまりました」
私「……めっちゃスマートやな!」
友人「知ってる料理の名前しか覚えられなかった」同じ穴の狢。私はマイブームの抹茶ミルクも頼みました。
ミルクがクリーミーでふわっふわ! 抹茶のほのかな苦味と豊かな風味!! 美味しい! 美味しい!
そしてなんといってもとろとろふわふわのキッシュ!
これがもう、口の中でふわっと解れて、野菜の甘みでとっても美味しい!!
こんなキッシュはここでしか食べられないかもしれないというくらい美味しい!!
チキンの煮込みもパサパサ感はまるで無く、口の中でとろとろに溶けていくんですよ!
トマトの甘みが素晴らしかった……!
タンドリーチキンを頼んだ友人は、「俺が今まで食べてきたものはなんだったんだ……」と絶句。
私もタンドリーチキンをその後いただいたんですが、本当にジューシーで美味しかった……!
友人「これはもう鶏じゃないな」
私「鶏じゃなかったら何?」
友人「……豚?」
私「いや鶏だよ何言ってんの」友人「そうだ鶏だ」と、パニックに陥る程の美味さ。
あとはもう美味い美味いとひたすら食べる我々。
語彙力は相変わらずの5才児並。
「お味はいかがですか?」と給仕係さんに訊ねられ、「美味しすぎて泣きそう」と答えたら、「涙はこぼさないようお願いします」と微笑まれてしまいました。
その言葉でさらに泣いちゃうよ!! もう!! おいしい!!
幸せ!!食事も最高だったんですが、デザートもまた最高でした。
ケーキのスポンジは滑らかでしっとり、マドレーヌもふわさく!(こぼしてしまいました。もったいないおばけに拐われてしまう……!)
チョコレートもとても美味しかったと友人は言っていました。私も食べたらよかったなぁ……!
そして、名古屋コーチンのプリンが本当に絶品で!
つるりとした喉越しと、口に広がる卵の甘み!
なんだこれー! なんだよこれー! 美味いよー!
同じ品を何度もおかわりしてしまう我々。
はらぺこだったのにいつしかお腹は満ち満ちに。
でももっと食べたい! もっと飲みたい! もっとこの空間に浸っていたい!!
それでも時間は訪れるもので、いつしか「お出かけの時間」になっていました。
■現実へ身支度を終え、「またのお帰りをお待ちしています」と言われながら外に出ると、凄まじい豪雨。
友人が車を取ってくると、傘をお借りして一足先に出ていきました。
豪雨の中、私の立ち話につきあってくれたドアマンさん。
と、そこに車がやってきます。
ドアマンさん「こちらに止まるお車ですね」
私「あ、じゃあ避けなきゃ」(おろおろ)
ドアマンさん「お嬢様そちらじゃございません!」
私「(おろおろ)」
最後の最後までみっともない姿を見せてしまうダメお嬢様が私だよ。やがてやってきた友人の車に乗り込み、我々は夢の世界から現実へと帰っていったのでした。
帰路、凄まじい豪雨と霧に阻まれ、パーキングエリアで休み休み戻りました。
長時間の運転をしてくれた友人、本当にありがとう!
そして、執事の館の皆さん、夢のような時間をありがとうございました!
今度は立派なお嬢様として帰るから、きっと待っていてね!
目標は2月、今度は新幹線かなぁ……?
[7回]
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